長崎市の鳥脚類恐竜(ハドロサウルス上科)の 歯の化石

2017年7月2日

長崎市の鳥脚類恐竜(ハドロサウルス上科)の 歯の化石について

福井県立恐竜博物館と長崎市教育委員会は、平成 25 年度から行っている共同研究調査によ り、長崎市内の長崎半島西海岸に分布する白亜紀後期の三ツ瀬層(約 8100 万年前)から複数 の恐竜等の化石を発見しています。 今回は、ハドロサウルス上科の歯の化石35点について報告します。 今回公表の歯の化石は、平成 25 年度から断片的な化石が見つかっていましたが、平成 27 年度及び平成 28 年度の調査による、より保存の良い化石が加わったことで詳しい鑑定が進み ましたので、報告するものです。 なお、長崎市における鳥脚類の化石は、長崎半島西海岸の三ツ瀬層から左大腿骨遠位部(ひ ざの関節部:平成 16 年発掘/平成 22 年公表)が、長崎半島東海岸の茂木地区北浦町の三ツ 瀬層相当層から右大腿骨の上半部(平成 23 年発掘/平成 24 年公表)がそれぞれ発見されて います(図1)。 記

1 発見化石 恐竜類 鳥盤類 鳥脚類 ハドロサウルス上科の歯の化石(35点) (うち上顎骨歯と確認できるもの19点) (図2:代表的な4点(①~④)のみ掲載)

2 発見場所 長崎市の長崎半島西海岸

3 特 徴 咬合面(噛み合わせの面)がU字型あるいは水平であり、表面には鳥脚類特有のY字 または十字の模様が見られます。歯根部が二つに分かれないなどから鳥脚類の歯と判別 でき、①1本の顕著な稜を持つこと、②白亜紀後期(約 8100 万年前)ということを考慮 すると、比較的進化したハドロサウルス上科の歯であると考えられます。 今回発見された歯は、実際に咀嚼に使われていた機能歯で、摩滅が進行し、生えかわ りによって自然に顎から抜けたものです。摩滅が進行した歯では上顎ないし下顎の歯で あるかの判断は困難ですが、上顎骨歯では歯の片側(頬側)に稜が発達し、その両脇は なだらかな曲線となります。また、歯の反対側の面(舌側、口蓋側)は凹凸のある不規 則な形状を示します(図2)。 鳥脚類の中でも特に、ハドロサウルス上科に分類される派生的なグループは、顎に歯 が密接に並ぶ“デンタルバッテリー”と呼ばれる構造を持ちます。これは、効率の良い 咀嚼を行う上での重要な特徴です(図3)。 今回の発見された歯はそうしたデンタルバッテリーを持つハドロサウルス上科の派生 的な種類であることは判明していますが、より詳しい種類の特徴は残念ながら残されて はいません。

4 意 義 本標本が発見された三ツ瀬層(約 8100 万年前)の時代は、鳥脚類のハドロサウルス 科の恐竜が主に進化し、アジアから北米にかけて繁栄していました。しかし、アジアの 内陸部には、ハドロサウルス科よりも原始的な種類(ハドロサウルス上科ではあるが、 ハドロサウルス科ではない恐竜)も発見されています。今回発見された歯は、種類を判 別できる特徴を残していませんが、多くの歯の発見は多様な種類がいた可能性や、既に 発見されているハドロサウルス科の大腿骨のような、体の特定につながる追加の化石の 発見が大いに期待できます。 さらに、自然に抜けた歯ばかりであることは、発掘現場は恐竜が生活をしていた場所 に近いと推察されます。継続的に調査を行い、その周囲にいた動植物化石の発見が続け ば、恐竜が暮らす多様な白亜紀後期の長崎の生態を復元できる可能性が広がります。

5 一般公開 (1)時間・場所 ① 平成 29 年 7 月 20 日(木)~7 月 23 日(日)長崎市軍艦島資料館【実物化石を展示】 ② 平成 29 年 7 月 25 日(火)~9 月 18 日(月・祝)長崎市科学館 【実物化石を展示】 ※一般公開後は、科学館 3 階展示室の恐竜化石コーナーにて実物化石を常設展示